イチロー引退会見に思うこと
ひょんなことで2019年のイチロー引退会見の動画を改めて観ていたのですが、
次の言葉が自分の心にグッサリと刺さりました。
人より頑張ることはとてもできない。あくまでも、秤は自分のなかにある。
それで自分なりに秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていくということを繰り返していく。
そうすると、こんな自分になっているんだという状態になる。
自分の限界を知りながら、少しずつの積み重ねでしか今の自分を超えていけない。
一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とのギャップがありすぎて続けられない。
地道に進むしかない。進むだけでなく後退しながら、あるときは後退の時期しかないが、
自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それが正解だとは限らない。
間違ったことを続けていることもある。遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない。(イチロー引退会見概要 - Yahoo!ニュース)
これは努力の人であるイチローの生き様を見事に体現した名言だと思います。
いくつかの大事なポイントに分かれていると思うので、分解して考察してみましょう。
人より頑張ることはとてもできない。あくまでも、秤は自分のなかにある。
まずこれは競争原理の否定です。
「他人より優れているから偉い」とか「他人より劣っているからダメ」みたいな価値観の否定。
それを「人と比較しちゃダメ」と安直に言うのではなく、
「人より頑張ることはとてもできない」と言うところに言葉の重みを感じます。
球界の最高峰まで登り詰めた天才がそう言い切ることには深い意味があると思います。
「誰々が頑張っているから、自分はもっと頑張らなければならない」
というような動機では人は長い間頑張り続けることはできない、ということなのでしょうか。
自分の限界を知りながら、少しずつの積み重ねでしか今の自分を超えていけない。
一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とのギャップがありすぎて続けられない。
これはいろいろな分野における自己研鑽に当てはまると思います。
自分の限界も知らないで理想だけ掲げてそれに向かって努力しても、
自分の無力さにうんざりして挫折してしまう。
まずは自分がどこまでできるのかを客観的に把握して、そのプラスアルファの地点を目標に据える。
それなら自分の限界を越えられるかもしれない。むしろ、それでしか自分の限界は越えられない。
これはかなり心当たりがあります。
自分は少し前までまず理想ありきで、そこからの引き算で努力の方向性を決めていました。
しかし、そういうやり方で成功した試しはほとんどありません。
自分の限界がどこにあるのか、という現実から目を逸らしていてはどうにもならないわけです。
その意味で理想を掲げるだけというのは現実逃避に等しいです。
自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それが正解だとは限らない。
間違ったことを続けていることもある。遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない。
これは非常に難しい問題で、いまの自分はまだ適切な答えを持っていません。
現時点の理解では、ある時点で知りうる中から選んだ選択肢を信念として掲げても、
後々になってそれが間違っていると分かることも往々にしてあるわけで、
要するに選んだことに固執しない、失敗を恐れないといった
チャレンジ精神の重要性を説いているのではないかと思っています。
この2019年のイチローの引退会見は小中学校の教材にしてもいいんじゃないかと思うほどです。
いやそれどころかもしこの世界が今後100年、200年と続くなら、
古今東西の偉人たちの名言に並んでイチローが語られる日が来るような気さえします。
本当にこの方は日本の球界にとっての宝ですね。