新宿駅のエスカレーター
世界一のターミナルとして知られる新宿駅ですが、
限られたスペースに数多くの路線が入り込んでいる関係で、
あとから作られた路線ほど地下深くにプラットフォームがあるという特徴があります。
もっとも深いのが都営大江戸線(地下5階)ですが、都営新宿線(地下4階)もなかなかの深さ。
その新宿線では最近エスカレーターの工事が続いており、
地下4階から地下3階に上がるエスカレーターは長らく使えない状況になっています。
地下3階から地下1階に上がる長いエスカレータは2基とも完成し、
しかもそのうち1基は高速エスカレーターとして整備されました。乗ってみると結構早いです。
このエスカレーターが完成してからは、常に係員が立っています。
工事は終わったのになぜ係員が常駐する必要があるのかといえば、
それは「エスカレーターは横2人で乗る」ということを呼びかけるためです。
東京都内ではずいぶん前から左側は急がない人のために立ち止まって利用、
右側は急ぐ人のために歩いて利用するという風潮が根付いてきました。
しかし歩いてエスカレーターを利用するというのは
①利用者の事故リスクの増加、②エスカレーターの故障リスクの増加、③輸送効率の悪さ、
の3点から好ましくないとされており、
鉄道各社が中心となって2列とも立ち止まって利用するよう呼びかけてきました。
しかし、さすがに根付いて何十年と経つ風潮だけにいまさら改めるのは困難のようで、
必死の呼びかけにもかかわらずほとんど効果は出ていません。
「右側で立ち止まると小突かれたり舌打ちされたりする」等のリスクを重く見ている、
というのがなかなか定着しない理由だと言われています。
ちなみに、上述の通り計算上は2列同時利用の方が全体的な効率は良いそうです。
1列利用ではエスカレーターのはるか後ろまで行列ができるというのは都内では日常茶飯事で、
これが急いではいないとはいえ多くの人にとって時間の無駄なのは言うまでもありません。
そこまでを考慮した上で近年の道徳観に照らせば、
少数派にすぎない急いでいる派だけのために大衆が損するのは理にかなっていない気がします。
ただ、だからといって率先して急ぎたい派と対立したくないというのも多数派の本音でしょう。
なんか条例でエスカレーターでの歩行を禁止している地域もあるそうですが、
それでもなかなか定着していないのが現状です。
ところが先日、この新宿線新宿駅でついに2列利用をしている光景を目にしました。
係員がどんなに呼びかけても2列利用はしないのが当たり前だったのでかなり意外。
見た感じでは係員が右側を塞いで強制的に2列利用させているわけではなく、
利用者が自主的に(なし崩し的に?)2列利用をした結果みたいです。
混雑時は自然と2列利用になることもありましたが、
2基並行している新宿線では
ラッシュ時でも2列利用を目にする機会がなかなか無かったので驚きました。
鉄道各社の必死な呼びかけはついに実を結びつつあるのでしょうか。