オタクを降りるということ
精神科医の熊代先生が、ブログ で『オタクを降りた。何も残ってない』と題するはてなブログを引用して、
オタク活動は20代・30代は続けられても、
同じマインドで40代・50代以降も続けるのは難しいとする自論を展開していました。
当該はてなブログや引用RTではさまざまな意見が飛び交っています。
熊代先生は40代(中年)以降もオタク活動を続けるのが困難であるファクターとして
時間、経済力、健康、関心(好奇心)の4点を挙げています。
が、このうち時間と経済力は要するに「家庭を持つとオタク活動にリソースを注げない」と言っているだけであり、
結婚とオタク活動は両立しないと言っているようにも聞こえます。
これはまぁ、そりゃそうだろうという以外の感想はありません。ここだけを切り取ればつまらない言説です。
ということは、独身であるかぎりはオタク活動は中年以降も難なく続くのか?
これについては、4点目の「関心」が重要なのではないかと個人的には思います。
熊代先生は「知識が増えるほど好奇心が減衰していく」と言っており、
また引用元ブログもさまざまなゲームやアニメを「流行りを追いかけては捨ててきた」と言っていますが、
個人的には好奇心がオタクの必須条件なのかと言われるとかなり疑わしいと思っています。
むしろ興味の範囲を狭めて、狭い世界でひたすら掘り下げ続ける人こそがオタク然と言える人種なのではないかと。
ただ流行りを追いかけているだけの人はにわかオタクでありミーハーです。
コンテンツの表面だけを摂取しては乗り換えるミーハーならそりゃいずれ興味関心が枯渇して飽きるだろうとは思う。
それは中年になったからどうこうというより、もともと持続可能性が低かっただけなのではないかと。
自分が知るかぎり、(単一コンテンツを掘り下げるという意味の)オタク活動をしている人はざっくり2つの側面があって、
それぞれ異なる動機によってオタク活動をしているように見えます。
いわゆる「本当のオタク」は、対象とする文化が純粋に好きだから活動しているという人たち。
こういう人は活動がアイデンティティと結びつくので、
好奇心が枯渇してきたからといってそう簡単にはオタク活動を辞めることはないように思います。
一方、本当のオタクと言えない人(要するにミーハー)は、対象とする文化が好きだから活動しているというよりも、
そのコミュニティに所属することによって社会的欲求を満たすことが目的になっているケースが多い。
対象とする文化は「他者とのつながりを担保するツール」でしかなく、
それに対する情熱は実はもともとそんなに持ち合わせていません。
はてなブログの投稿主はどちらかというとこちらに該当するように見受けられます。
この意味での「本当のオタク」とミーハーの境界線は実はかなり曖昧で、
一個人を見ても部分的には本当のオタクで部分的にはミーハーということは往々にしてあります。
ただ、個別のコミュニティでは両者の違いというのは話しているとすぐに分かる。
対象とする文化が心の底から好きでない人は、コミュニティに所属しても望むようにチヤホヤされることはありません。
なぜなら「純粋にそれが好き」な人の方が圧倒的に熱量も活動量も上だからです。
結果として、コミュニティに属することまではできても永遠にそこから地位が向上しない。
コンテンツがめちゃくちゃ好きというわけではないので別にそこにいて何か充実感を感じられるわけでもない。
だからといってそこから抜けると孤独になってしまうのでなかなか抜けられない。
そんな欲求不満の狭間で生き続けた末に中年になったとき、
自分はリアル人間としてもオタク人間としても何もできていないということに気付かされる。
熊代先生は、そういう人はえてして政治経済を語る人間になると言っていますが、
個人的には「いきなり婚活に目覚める」というのもあるあるだと思っています。
いずれにしろ、ミーハー活動に行き詰まると中年になってからいまさらのようにリアルに回帰するということですね。
確かに政治クラスタはその受け皿としてわりと適当な気がしないでもない。
特定の政党を支持するという名目でクラスタに埋没してしまえば、「個」としての実績は問われなくなるわけで。
そういう人は支持政党の実績があたかも自分の実績になるのでしょう。
自分は残念ながら多くのコミュニティにおいて後者のオタク、つまりミーハーに近いポジションを自認しています。
オタクが片道切符の列車だとしたら、そこから降りることをずっと躊躇い続けているという段階。
列車から転がり落ちることは少なからず痛みを伴うものであり、その決断には勇気が要ります。
かつて自分はオタク列車から降りてリアルを志向した人を「オタクから脱落した人」と見下していた節もありますが、
ある意味自分みたいな損切りできない人間がもっともタチの悪い人種なのかもしれません。