椎骨動脈解離で入院生活 #1
もしかしたら、今日が自分の人生にとって大きな分かれ道だったのかもしれません。
人生で初めて入院することになりました。それも、一切の事前準備を許されない緊急入院。
昨日の予感は不幸にも当たってしまったというわけです。
一昨日発症したと思われる頭痛は、三日目になって明らかに「右半球のみ」に痛みが出るようになりました。
当初は後頭部の首の近くだけ感じていた痛みは頭蓋内の範囲にも広がるようになり、左側はなんともない。
これはいわゆる片頭痛なのではないかと思い、チャッピー先生に症状を説明しました。
ChatGPTは自分が寝違えだと思っていた発症初日から、「後頭神経痛で説明できる部分に重なる症状が多い」としつつも、
吐き気、めまい、呂律が回らない、嘔吐感、手足の痺れがあれば
椎骨動脈解離などの血管性疾患の可能性が否定できないため、すぐに救急受診すべきとも回答していました。
とはいえ自分は発症から今日までそういう症状は出ていないので、
少なくともそうした急を要する事態にはなっていないと認識していました。が、ただの寝違えとも思い難い。
2日目もChatGPTに「痛みの範囲が広がりつつあり、首を振ったり下に向けると痛む」などの症状を説明しました。
回答は、それが本当に後頭神経痛や頸性頭痛であれば矛盾する症状ではないとしつつも、
「椎骨動脈解離の可能性を否定するためにも脳神経外科の受診を強く勧める」というものでした。
そして3日目、「片頭痛の可能性は無いか?」と現在の症状を添えて質問したところ、
「確かに片頭痛の可能性もあるし、依然頸性頭痛の可能性もある。しかし椎骨動脈解離の可能性もいまだ捨てきれないし、
それはオンライン診療で判断できるものではない。できれば今日、無理なら明日にでも医師の診察を受けるべき」
と言われ、ここで自分はようやく、「できれば今日」というフレーズから
これが只事ではない可能性があるニュアンスを感じ取り、最寄りの脳神経外科へ行ってみることにしました。
まあこの頭痛がある限り作業も集中できないし土曜日に主催予定のイベントにもまあまあ支障が出る。
MRI検査はやるだろうから医療費は安くないけど、
市販薬でどうにもならない段階なら背に腹はかえられんか……と思い渋々行くことに。
バスで最寄の脳神経外科病院に行き、MRI検査。
MRIは超強力な磁力のチカラで脳内の映像を撮るすごい機械で、動作中は爆音で電子音やらなんやらが鳴るのですが、
なんというかエレクトロニカを作る売れない前衛音楽家が最終トラックにドヤ顔で入れてそうな音楽性を感じました。
そして診療室でその結果の画像を見ながら医師が淡々と説明を始めました。
「脳はまったく異常出てなくて綺麗です。ただ首から脳に伸びている血管がここにあるんですが……
ここまで影が映らないように細くなっていて、ここで一気に広がっているでしょ。
……椎骨動脈解離って知ってますか?」
「(ChatGPT先生が言ってたやつだ……!)」
「これは最悪の場合、くも膜下出血や脳梗塞といった重篤な症状を引き起こしかねないので、
私いまから紹介状を書くので、明日にでも大きな病院に行って改めて見てもらった方がいいです」
面倒なことになったなぁ……と、この時点ではまだまだ楽観的に考えていました。
しかし大きな病院のおそらく救急外来の担当医と話している受付のお姉さんが、電話を片手に近づいてきました。
「あの、今から来ることはできないかって言われていて……。タクシーとかで行きます?」
「今から……ですか?」
本当にちょっと業務中の中抜けという感覚で出てきたので、
この時点でスマホのバッテリーも危ういくらい準備ができておらず、念の為電車移動中だけChargeSpotで充電しました。
約8,000円を支払ってその病院は後にしましたが、その後バス→電車と乗り換えて大きな病院の救急外来へ。
すぐに下着以外の服をすべて脱いで簡素な病衣に着替えるように言われ、診療台へ寝かされました。
これじゃあ本当に救急の患者みたいじゃないか……。
ベテランっぽい日本人の看護師とバイトっぽい外国人の看護師?の2人がかりで作業は同時に進み、
左手は点滴注射を打たれ、右手は血を抜かれ、個人情報を根掘り葉掘り聞かれ、そしてしばらく放置されました。
10分後くらいに担当医師を名乗る男性が登場。
引き継ぎ前の病院からもらったデータをまだ見れていないので確実なことは言えないが、と前置きしつつも、
「前の病院の先生が言うように椎骨動脈解離なら、発症すぐが一番危険なタイミングです。
あなたはいま3日目なのでもっとも危険な山場はすでに越えているが、まだ万が一が無いともいえない。
今日はできればこのまま入院していただきたいのですが、よろしいですか?」
「今すぐ……ですか?」
「はい」
「一時的に帰宅して準備をしたいんですが……。仕事も何もかも途中で来ているので……。せめてスマホの充電器を……」
「気持ちはわかりますが、私としては一時帰宅も我慢していただきたいです。いまはとにかく目を離したくない」
「どうしてもですか」
「付き添いがいればいいんですけどね。お一人でしょう。
仮に許可をして、万が一めまいが出て呂律が回らなくなったら電話もできなくなるんです。そうすると助けさえ呼べない。
そういう可能性がある以上は許可できないですね」
「わかりました……」
そしてしばらくして、念のためこちらでもMRI検査を受けることに。
MRI検査室へ移動するのですが、看護師が押してきたのはなんと車椅子。
「しばらくはこれで移動しましょう」
と車椅子に押されて移動する自分。大げさだなぁ……と思いましたがこんなのは序の口でした。
今日2回目の出来の悪い電子音楽を聴いて、今日のところは病室で寝ることに。
もちろん車椅子で移動し、着いたのは別棟の3階。
「ご自分では歩けないので、トイレに行きたいときはこれで呼んでください。あと今日は何度か血圧測りに来ますね」
と説明され、この日はそのままトイレにも行かず、ただ病室に横たわって無心でいました。
最後の頼みの綱のスマホはもうバッテリー切れ寸前で何もできない。
環境が変わった上に常備薬の睡眠薬にも頼れないのでとにかく寝れない。
もとより、深夜も3時間おきに看護師が血圧を測りに来るので眠れるわけがありません。
結局初日は一睡もせずに翌日を迎えることになり、こうして自分の人生初の入院生活が唐突に始まったのでした。