ゆるやかな共産主義
もう半年以上前になりますが、
前の会社でマネージャでもあった会社のお局様と仕事の進め方について大激論となり、
お局様の特権によって自分が一方的に強制異動になったという理不尽な出来事がありました。
自分は、当然自分に非は無いと思っていたので食い下がるのですが、
お局様本人に言ったところで無駄なので社長に直訴しました。
しかしこの社長というのがまた変わった人で、
自分とお局様の口論の話をしていたはずが、
いつの間にか社長がトークを披露する時間になっていました。
結構一代で成り上がった経営者はこういうことをしがちです。
そういうことで結局直訴は無駄に終わったわけです。
その後、異動先はやっぱりというかまあブラックな現場だったので即行で転職を決意し、
ある意味そのおかげで年収は大幅アップしていまに至るわけですが、
まあそれはさておき、その社長のトークというのもまあまあ興味深いものでした。
異動事由に「お局様を怒らせたから」ということを書くわけにもいかないので、
便宜上の異動させる根拠は「週3テレワークの特例を許しても勤怠が改善しないため」でした。
当時の自分は通勤が往復3時間かかるその職場に行くことが大きな負担となり、
社会人生活始まって以来最悪とも言えるほどの酷い不眠症に陥り、当然勤怠不良にも陥りました。
そこで社長にお願いして、特例でテレワークを許可してもらいました。
そもそもパソコン1台あれば完結する仕事でなおかつセキュリティ上の懸案も特に無いので、
むしろなぜフルテレワークじゃないのかと憤ったものです。
会社は交通費を負担するし労働者本人は通勤の負担があるし、良いことないじゃないかと。
しかしそれはもう会社の方針として決めたからということで、
何人も直訴したらしいのですが社長は方針を変えることはありませんでした。
そういう意味では自分が特例でテレワークの許可をもらったことはラッキーだったのですが、
結局これがある意味決定的に会社に異動のきっかけを作らせてしまったようです。
というのも、自分より以前にテレワークしたいと直訴してきた新卒社員たちは、
「あいつだけ特例で認められるのはずるいじゃないか」
ということであっさりと退職を決めたのだそうです。しかもそれが3人もいる。
プロジェクトルーム内のメンバーはマネージャー(お局様とは違う人)を除いても8人しかおらず、
その8人のうち現場を引っ張っていたのがその辞めると言い出した3人でした。
社長は、自分が睡眠に悩んでいることを知っていたのでそれを考慮して特例を出したわけですが、
直訴した3人にしてみればそんな事情は知らないということなのでしょうか。
よしんば深刻な事情があったにせよ特例を認めてしまうと他の社員が文句を言い辞めてしまう。
それだと会社の経営もままならないので、
特例を認めない方向に転換せざるを得なかったと言います。
そのときに社長が辞めた3人を、ある種批判的な意味で
「最近の子は緩やかな共産主義に染まっていると思う」とつぶやいたのがとても印象的でした。
共産主義とは、超ざっくり言えば不平等を許さないという考え方です。
財産の私物化は認めず、すべては公共のものであるべきだという立場です。
自分は別に共産主義ではないしその言葉を深く知っているわけではないですが、
それを採用している中国やナチスドイツ、ロシアといった面々を見て印象が良くないのは確かです。
ただ一方で、富の再分配が機能していない昨今の格差社会を鑑みると、
それを当たり前のように見てきた若い世代が共産主義を支持するのは全然不思議ではないのかも。
辞めた3人は、「同じように給料をもらっている社員なのに、
各人の事情があるからとはいえ特定の社員を優遇するのはズルい」という主張を社長にぶつけます。
つまり、同じ立場であるからには待遇も常に同じでなければならないと。
社長は、特定の誰かだけを優遇することに強い不快感を感じているように見えたそうです。
それが共産主義の考え方として本当に正しいのかは疑問ですが、
ただ表面上は「平等を信仰している」という意味で共産主義っぽいような気もする。
だから社長は「緩やかな共産主義」と表現したわけですね。
自分は何度かブログに書いているように「平等なんて絶対不可能」と考えている立場なので、
そういう意味では共産主義とは対立する考え方の持ち主なのかもしれません。
個々の事情を考慮せず、ただ同じ人というだけで一緒くたに扱うのは暴力的ですらあると思います。
もちろん、事情があるからといって過剰な特権を与えるのも間違いだと思っています。
昨今の行きすぎたLGBT運動なんかがまさにそう。
まああれは本当に当事者が活動しているのか怪しいものですが……。
とにかく物事は平等であるかどうかというよりも、
公平であるかどうかの方が大事なんじゃないかと。
社長のスピーチを聴いて、ああ自分は共産主義には同意できない立場なんだなと改めて認識しました。
まあ、だからと言ってお局様を怒らせてよかったなどとは露ほども思いませんが。