目標にしてはならない超人
おそらく日本で一番有名なゲームデザイナー桜井政博さんのYouTubeチャンネル、
「桜井政博のゲーム作ること」が最終回を終えて運営終了となりました。
2022年当時の桜井さんは『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』の追加DLCプロジェクトが完全に終了し、
次に参画するプロジェクトは決まっていたものの人数集めのため始動まで丸4ヶ月ほど空くことに。
そこでこの4ヶ月間を活用して「ゲーム業界をちょっとだけ底上げする」ことを目的とし、
短期集中でこのチャンネルを制作することにしたそうです。
今回の終了に際し、ゲーム業界からは様々な賞賛あるいは畏怖が届いています。
「トップクリエイターが完全無料でノウハウを公開してくれたことによって、
ゲーム制作を情報商材にしようとする拝金主義のコンテンツがかなり淘汰されたのは良いこと」
というような意見も結構ありますが、これは事実なら本当に羨ましいかぎり。
web制作界隈なんてもう高額な塾へ誘導することしか考えていない信憑性がアレな企業サイトばかりですからね。
自分は桜井さんチャンネルはまだ部分的にしか見れていないですが、
いずれ本格的にゲーム制作をするようになったら良い教科書になってくれるだろうという期待があります。
しかし一方で、軽率に桜井さんを目標にしてはならないと強く戒めています。
桜井さんはゲームクリエイターとしては間違いなくトップクラスで、そういう意味で憧れの的でしょう。
ただ一方でバイタリティが常人のそれを遥かに上回っているいわば「超人」であり、
基本的に同じことを常人が真似しようとすること自体に無理があるのではないかと思っています。
それは最終回スペシャルで赤裸々に語られたYouTubeチャンネル制作の裏側や、
スマブラDX開発当時の「点滴を打ちながら仕事をしていた」「数ヶ月間土日も働き続けたことがある」
「連続40時間働き続け、3時間寝るためだけに家へ帰った」
などといった恐るべきブラックエピソードを聞くと痛感します。そんなん絶対真似できないって。
むしろこれを聞かされて「俺にもできる」「俺もこうならなければならない」と思ってしまうのは、
桜井さんレベルにすごい人か、あるいは不遜なだけのただのバカでしょう。
自分はゲーム作りは長年の夢としつつも、
能力不足や自尊心、その他諸々の都合でそれを20年近く実践することをしてこなかった筋金入りの愚か者です。
そういう意味ではゲームを1本作り切った人でさえも尊敬や羨望の対象であり、桜井さんは本当に雲の上の存在です。
いま、改めてそれでもなお長年の未練に立ち向かうべきか否かの分岐点に差し掛かっているわけですが、
そんな状況に桜井さんがゲーム作りのノウハウを全部出すコンテンツを出してくれたということは
自分にとっては蜘蛛の糸を垂らされたようなものなのかもしれません。
しかし、果たして自分はそれをたぐり登っていく勇気があるのでしょうか……?
その結末は今後数年で明らかになるのではないかと思います。