作品に集中することの重要性
イギリスの国営放送局であるBBCのラジオ局(BBC Sounds)で、
エレクトロニカ・アーティストのAutechreが20曲チョイスしてDJする企画(?)があったらしく、
ぴったり1時間のそれを仕事の合間に聴いていました。
冒頭の楽曲があまりにもAutechreっぽい楽曲だったので「NTS Sessionsみたいな企画なのかな?」
と思っていたら全然違うアーティストのオリジナルタイトルでした。
Autechreが選んでいるという信頼感も手伝って久々になかなか重厚なリスニング体験ができたのですが、
このときに改めて、音楽は聴く姿勢というのもめちゃくちゃ大事なんだと思わされました。
ダンスミュージックやポップミュージックは通勤中に聴いてもなんら問題なく、
むしろそうやって運動しているときに聴く方が気分がアガりやすいという利点もあります。
アンビエント、ジャズなどのインストはムードを作る役目もあり、作業しながら聴くのがうってつけです。
では、微妙にどちらにも当てはまらない より実験的なエレクトロニカはどう聴くのが正解なのか?
個人的には、理想は他の情報を遮断して聴くことに集中する環境を用意することだと思っています。
サラウンドスピーカーを配置したサウンドルームや高級ヘッドホンを用意して、
音楽を聴くことを第一目的とした空間を作る。
作業用BGMとして聴くには勿体無いジャンルなのではないかと改めて思います。
作業用と割り切って聴いたところで細部の音の粒などは耳に入ってこないし、
ヘッドホンを装着していなければ重低音なども聴こえてきません。
それは厳しいことを言えばエレクトロニカを聴いていないのと同義であり、
この種の複雑な音楽はやはり多少の集中力は要ると思います。
2010年ごろを中心に自分の中で一時はゲームを越える勢いで熱中した電子音楽界隈ですが、
上京以来、ヴェイパーウェイヴと出会った時期を除けば基本的に低調であり続けてきました。
しかしそれは興味を失ったわけではなく、
「集中して聴ける環境」から遠ざかっていたことによる副作用だったのではないかとつくづく思います。
確かに、音楽自体に集中するような音楽の消費の仕方は近年全然してこなかったなと。
そしてそれがエレクトロニカという音楽を過小評価する要因になっていたのではないのかと改めて思いました。
先述のBBC Soundsで聴いたときにビビッときたアルバムはその場でApple Musicでダウンロードし、
直後に同じようにアルバムを聴いたときもやはり感動したのですが、
寝る前に作業がてら2周目を聴いたときはそういった感動はほとんどありませんでした。
いかに姿勢によって音楽の「聴こえ方」が異なるかを体感した気がします。
いまの時代、Amazonプライムビデオで映画はいつでもどこでも見放題ですが、
だからこそ映画は「ながら見」のための低コストなエンターテイメントとして消費されつつあり、
それは映画というものの価値を低めてしまっているような気がしてなりません。
やはり映画は映画館で見るからこそその価値が分かると思うし、それは音楽に関しても同様のことが言えます。
もしかしたらゲームについても同じことが言えるのかもしれない。
なんでもかんでも供給過剰な現代だからこそ、目の前の文化に集中する姿勢はより重要と言えるのかもしれません。