芸術家の定義
最近ホロライブ界隈でなにかと話題のクイズメーカーですが、
「さくらみこ」か「GACKT」か「ローランド」の誰が言ったセリフか当てろというクイズを、
さくらみこ本人が取り上げるという配信がありました。
なお後年のための補足ですが、
GACKTは紅白出場経験もある激シブ声のヴィジュアル系シンガーソングライター、
ローランドはホスト界の帝王とも呼ばれる若い実業家で名言集が40万部以上売れています。
どちらもまあトップレベルと言ってもいいほどの強者イケメンと言えるでしょう。
なお、さくらみこはアホ……じゃなかった、えりーとな発言がよく出ると評判のウザかわ系VTuberです。
この3人のうち誰が発言したか当てるという趣旨のクイズなのですが、その中でこんな名言がありました。
人の想像力を借りたままじゃ、芸術家になれない
これ、なにげに昨今のAIアーティストの台頭に一石を投じる非常に深い言葉だと思います。
最近、サブアカ(もう本アカと言ってもいいかもしれない)でフォローしている絵師さんが、
いわゆるなりすましアカウントの被害に遭ったということで声明を出していました。
そのやり口は、AIでその人のイラストを重点的に学習させ(LoRA)、
その人らしい絵柄で生成した新規イラストを量産し、同名の名義のSNSアカウントに掲載するというもの。
自分が観測できる範囲だけでも結構頻繁に起きています。
これは倫理的には明らかにアウトだと思うし、著作権的にも「無許可の二次著作物」とみなすことができます。
基本的にパクりが法的に問題になるのは「元絵を想起できるような模倣が認められるかどうか」なので、
そういう意味でもアウトになりそうです。
しかし、じゃあ手書きなら二次創作がセーフかというとそんなこともないわけです。
イラスト制作において、手描きもアウトなケースは多々ある。
いまでこそコミケは大衆向けのイベントみたいな空気になりましたが、
かつてはポケモンの同人誌が大々的に訴えられるなど、非常にグレーな中でやってきたという側面があります。
そしてそれから法律が緩和しているわけではないので、グレーであることはいまも変わりません。
著作権者が二次創作を許諾しているケースが増えてきているのでその範囲ならセーフと言えますが、
もちろんそうでない作品を扱っているケースも多々あるわけです。
手描き vs. AIイラスト論争はAI側が圧倒的に不利な印象を受けますが、
実は手描きもずっとアウトで、赤信号をみんなで渡っているに過ぎないこともあるということです。
逆に、AIイラストは特定絵師のLoRAを使わないかぎり、オリジナル絵は著作権的にはセーフになりそうです。
ただ、法的にどうこうというより従来絵師がAIイラスト生成をもって「絵師」と名乗って欲しくない心理はわかる。
法律が倫理に追いついていないんですよね。
しかしこの名言を読んだとき、そのモヤモヤがストンと落ちる気がしました。
AIイラスト生成は萌え絵を作るが、「芸術家」ではない。これはかなり説得力があると思います。
しかしこれはAIがどうこうというより、いわゆる萌え絵そのものが芸術でない可能性も示唆していると思います。
くだんの名言は、芸術家になる条件を人の想像力を借りずに完成させると定義しています。
AIイラスト生成がプロンプトと既存絵を組み合わせている作業に過ぎないかぎり芸術家でないのは当たり前として、
手描き絵師もその意味での芸術家に当てはまらないことはよくあるのではないでしょうか。
二次創作は論外として、オリジナルでも多かれ少なかれ、
他人の作品、素材、ポージングなど自分でイチから想像せずに参考にしている部分があるからです。
それは著作権的にセーフティでも「想像力を働かせて作った」とは言えません。
実はフェチを追求しただけの手描きも
本質的には「アーティスト」と言えないケースも多々あるのではないか……と思った次第です。
しかしそもそも追求するしているのは「萌え」であって芸術ではないので、それも間違っていないとは思います。
「萌え」は要するにフェチの権化であり、それが芸術的である必要は必ずしもないということです。
この名言は萌え絵の本質を撃ち抜く鋭い言葉だなと関心しました。
まさかこれをみこちが言ったなんてにわかには信じがたいですが……。