椎骨動脈解離で入院生活 #6
入院6日目。
MRI、造影MRIと経てついに頭部カテーテル検査の当日がやってきました。
この日は朝からいっさいの飲食禁止。そして昼前になると手術室担当のスタッフが現れ、諸々の説明。
下着はすべて脱いでリハビリパンツという名目の要するにオムツを履き、
あとは青色の特殊なガウン、いわゆる検査着のみを羽織る格好に。
検査着はあらゆるところにボタンがあり、どこからでも脱がせられるような設計になってそうでした。
そしていよいよ出番が来ると、病室前に用意されたストレッチャーに寝かされ、
看護師2人に運ばれました。
エレベーターで2階に移動するとそこはもう中央手術室のドア。
中に入るとたくさん人がいましたが、その中をさらに進んで巨大医療器具だらけの処置室らしき部屋に入ります。
4人がかりで迅速に準備は進んでいき、自分は徐々に身体が固定されていきました。
背中とストレッチャーの間にはなんらかのパネルが少し斜めに差し込まれて胴体は動かせなくなり、
頭も当然いろいろスキャンやらなんやらするので器具で固定され、
右手は一定時間で自動的に稼働する血圧計、右手は点滴に加え、親指には脈拍を測る装置。
処置室には自分の脈に連動した電子音がリアルタイムで鳴り響いており、
「ここの主役は自分なんだ」感が若干ありました。
主治医がこれからする処置について各スタッフに淡々と説明し、
自分に顔を近づけて「では初めていきます。何かありましたら声でお知らせください」と淡々と言いました。
ガウンを外されて鼠蹊部を露出され(当然股間も丸見えです)、入念な位置確認のあと局部麻酔。
その後、スタッフが「意識がぼやっとする薬を入れますね」と言うと、
点滴の穴からなんらかの冷たい薬が左手の血管に流し込まれる感覚がありました。
鼠蹊部の血管にカテーテルを入れるところは、何かそれらしい感覚はありましたが痛みは皆無でした。
やがて自分は麻酔が効いてきて30時間起き続けているときのような朦朧とした感覚になり、
意識を含めたすべての自由を奪われていきました。
何かを理性的に考える自由さえ奪われた自分に残された最後の自由空間である顕在意識には、
白昼夢のように鮮明な映像が次々に流れてきました。
16bit化された『ぽこあポケモン』だったり、あるいはまったくやったことのないゲームの映像だったり、
瞼の向こうにあるであろう医療機器だったり、ほとんどノイズのような意味不明な映像だったりと、
潜在意識が暴れ回っているかのような映像が、ドパガキもびっくりなペースでチカチカと切り替わり続けていました。
そうして記憶の中の何かを組み合わせてはありもしない記憶を映像化しているうちに、
あっという間にカテーテルは椎骨動脈付近に到達していました。
「ちょっと頭が熱くなりますよ」という主治医の発言の直後、後頭部が一気に熱くなりました。
造影剤を打ち込まれたのでしょう。
ということは、いまの自分は鼠蹊部から頭まで一本の管が通っているということ??
造影剤は何度か打たれ、そのたびにそれを読み取っているのであろう頭部周辺の機械が動いていました。
そしてしばらくしてカテーテルは抜かれたらしく(当然ですが何の感覚もありませんでした)、
鼠蹊部をギュッと押さえつけられて止血。
そして腰とふとももにテープをぐるぐると巻かれてひとまず施術は終わりました。
主治医からはその場で、「動脈は正常に脳に血液を送っているが、(頭蓋内に)動脈瘤ができている。
この動脈瘤がどう変化するかを見たいので、入院を延長して追加のMRIやCTスキャンをやっていくことになる。
そのCTスキャンの結果によっては、手術になるかもしれない」
という趣旨の説明を受けました。
6人がかりで手術台からストレッチャーに載せ替えられ、ストレッチャーで寝たまま病室へ。
病室ではスライダーとかいう器具を使って3人の看護師によってベッドに移され、
ここから4時間は一切動いてはいけない、特に右足は曲げてもいけないと説明されました。
4時間経過後も寝返りが解禁されるだけで明朝までずっと寝ていないといけないことには変わりません。
トイレはどうするんのと思われるかもしれませんが、尿瓶(しびん)を使います。
尿瓶とは介護の現場で使う、寝たまま小便ができる器具のことです。
当然寝たきりの場合は尿瓶があっても自分ですることができないので諸々サポートしてもらう必要があるわけです。
まぁもうここまで来たらそれに対する羞恥心も屈辱感も何も感じないわけですが、
それはあくまで心の持ち方の問題。実際にはより深刻な問題がありました。
トイレ以外で排尿する経験が人生で皆無ということもあって、尿瓶を向けても出ないんですよ。
最後に自力でトイレに行ったのが10時。検査が13時に終わり、17時までは寝返りも禁止の絶対安静時間でした。
そして21時ごろにさすがに膀胱が限界に達したので意を決してナースコールするんですが、
膀胱はパンクしそうなのに、アレをちゃんと尿瓶に入れていつでも排尿していいはずなのに出ない。
結構頑張ったのですがどうしても出なかったのでいったん諦め、
しかしこのままでは膀胱が破裂しかねないということで22時すぎに再度チャレンジしてようやく出ました。
初めての尿瓶ではこういうケースが結構あるみたいです。
正直、膀胱がパンクしそうなときは検査本番よりもよっぽど怖かったですね……。