Chrononglyph

創作界隈

#8193

粗製濫造への逆風

今日の出来事創作界隈

気温が30度を超えたと思ったら13度まで落ちるという殺人的な寒暖差に参っている今日この頃。
まぁそれはさておき、最近AIやら表現規制やらで逆風が吹いている一次創作界隈にとって、
もしかしたら追い風になるかもしれない2つのニュースを目にしたので紹介します。


まずは、若年向け出版最大手のKADOKAWAが出版分野で赤字を計上し、
なろう系・異世界系への偏重が市場飽和を招いた 」と発表した件。
この手のジャンルはそれ自体に実績があるものの似たり寄ったりの作品があまりにも多く、
結果的に作品数は増えたものの突出したヒット作品に恵まれず、市場が飽和してしまったとのことです。
自分がなろう系に対して良く思っていないのは言うまでもないですが、
とにかくこの界隈は「弱者男性が転生して無双する」というテンプレートで読者が現実逃避できればそれでよく、
文学作品としての修辞法、心情描写、個性的な世界観などいった作品のコア要素が軽視されている印象があります。
中にはそうでない作品もあるのかもしれませんが、とにかくあまりにも読むに値しないクソ作品の数が多すぎる。
AI生成によって執筆ハードルも下がっていると思われ、
小説投稿サイトはもはやレッドオーシャンになっていてプロが平凡なタイトルで投稿しても誰にも読まれないそうです。
少しでも目立つために長ったらしいタイトルで作品内容を説明する独特な文化は、
まさに市場飽和と見掛け倒しなクオリティを象徴していると思います。
しかしそれでもアニメ化などで一攫千金のチャンスがあるジャンルとして近年注目され続けてきました。
これは当然、従来型のラノベないし一般向けの「比較的まともな」文芸を書いてきた人にとっては面白くないでしょう。


しかし今回、最大手であるKADOKAWAが赤字の原因として名指ししたことで、方向転換せざるをえなくなると思います。
編集者の数を減らし、出版される作品の数もかなり絞るのではないでしょうか。
ひいてはそれが現代の過剰な「なろう系偏重」の時代を終わらせ、
せめて一昔前のラノベに回帰する流れになってくれればと思っています。
これにかぎらず、参入ハードルがきわめて低く一発当てれば大儲けできるような界隈、
いわゆるレッドオーシャンと言われている界隈はどこもかしこも割に合わないことがバレつつあります。
個人的には零細ゲーム実況者も今後5年で一気に数を減らすんじゃないかと思っています。


もうひとつのニュースはChatGPTを提供するOpenAIが、電子透かし技術「SynthID」を導入すると発表した件
SynthIDはAIがコンテンツを生成する際、人間には分からない微弱な調整をすることによって、
コンテンツに影響を与えないようにしつつ、それがAI産かどうかツールで判別することを可能にする技術です。
これの驚くべきは画像はもちろんですが、プレーンテキストにも対応しているということ。
単語の選別傾向などで判別可能にするそうです。
いま、AI産の作品がApple Musicなどの音楽サブスクやPixivなどのイラスト投稿サイト、
果ては文学賞にまで侵食していてなにかと物議を醸していますが、
この話題で荒れるとたいてい「AI産であるかどうかをどう判別するのか」というような話が挙がってきます。
もうすでに人力で確実に判別できるような段階ではなくなってしまっているからです。
しかし大手生成AIアプリがみんなSynthIDを採用すればツールを使えば誰でも判別が可能になるわけで、
少なくとも今後はクラウドAI産を人力と偽って賞などに応募するのはかなり厳しいのではないかと思います。
もちろん、ローカルAIを導入されたらどうしようもないのですが。


Apple MusicにアップされるAI生成音楽は新譜の3分の1を占めるそうですが、
一方で「消費されている」AI音楽は全体のわずか0.5%にすぎないそうです(musicman )。
この0.5%に当てはまる線引きがよくわかりませんが、とにかくまったく聴かれないAI音楽が大量に氾濫していると。
キュレーションのアルゴリズムの関係などいろいろな内部事情はありそうですが、
数字だけ見るといまのところ主要消費者は「まあAIでもいいや」とは思っていないのが現状ではないでしょうか。
そしてそれは音楽に限らず、静止画も文芸も変わりません。
AIがどんなに「それっぽい」作品を作れても、人はやはり人が作ったものを楽しみたいんだろうなと。


透かし技術が導入されればAI作品は人力作品と偽って投稿するのも難しくなっていき、
なろう作品のように飽和してしまえば投稿したところで誰にも消費されないことが当たり前になっていきます。
こうした現状を考えると、旧来のプラットフォームはAIに対してNOを突きつけ、
それとは別にAI作品投稿プラットフォームを確立させるのが一番Win-Winだと思っていますが、どうでしょうか。


#7391

パトロンサイトの転載問題

今日の出来事創作界隈

推し絵師との出会いとコミケをきっかけに、
去年末〜先月くらいまでは萌え絵への興味がかなり高まっていました。
さすがに昨今はひと段落した感がありますが、夏コミ前後でまた再発しそうな気がします。
これというのも推し絵師さんと出会えたおかげです。
しかし、その方もあることに悩まされているようで、Fanboxでのアップデートのたびにそれに言及しています。
一言で言えば限定公開イラストを無断転載する人がいるという悩み。


Fanboxは継続課金(支援)しなければそもそも閲覧ができない「パトロンサイト」の一種です。
イラストレーターはPixivである程度有名になるとパトロンサイトでアカウントを開設して、
限定コンテンツを公開することでファンからの支援を募ることが多いです。
これはPixiv自体がYouTubeなどと違ってインセンティブ制度を一切備えていないため、
どんなに創作に時間をかけても収益化することができない(=仕事と両立せざるを得ない)ためです。
有名絵師になってパトロンサイトの登録者数が増えればそれ一本で食っていくことができるようになり、
よりイラストの制作に集中できるという好循環が生まれます。


イラストの無断転載はネット黎明期からある問題ですが、
最近はパトロンサイトにアップされた限定公開イラストをも無断転載する悪質な手口があるようです。
限定公開されたイラストを無断転載されてしまうと、
登録者数減によって絵師の収入・モチベーションが低下しクオリティが上がらなくなる、
登録者への不信によって限定公開イラストをアップしにくくなるなどの明確なデメリットがあります。
無断転載する本人さえ、お金を払って無断転載する行為によって何も得することはありません。
パトロンサイトという仕組みを破壊しているだけの愚かな行為です。
一説にはネットで金儲けをすることそのものに嫌悪を抱く人たちがこういう迷惑行為を支持するそうです。
資本主義を否定する勢力と言えば聞こえはいいですが、まあ十中八九ただの無職の妬みでしょう。
悪質なアフィリエイターに嫌悪する気持ちはわからなくもないですが……。


しかしこの問題は、そもそも成果品が数MBに過ぎない小さなファイルであり、
webサイトに表示するだけで作品の鑑賞が成り立ってしまう以上100%防ぐのは難しいと思います。
ローカルでしか開けないようなファイル形式にしたとしても変換されれば終わり。
だいたい閲覧できた時点でスクリーンショットしてしまえばいくらでも融通効くわけで……。
2Dのイラストである以上は対策は難しいのではないかと思います。
あとはブロックチェーン技術を使って解決できるかどうか……といったところでしょう。


昨今はPixivをほぼ丸ごと転載するようなサイトも登場したり、
Stable Diffusionのような生成AIによる意図せぬ盗作が蔓延していたりと、
イラストレーターに対する倫理的・技術的な逆風が強いのはかわいそうだと思います。
動画文化はある程度YouTubeという巨大プラットフォームに守られている感はありますが、
静止画界隈はどうしようもないんでしょうかねぇ……。