MTGの誤訳問題
自分の中で過去2回大きなブームが来たにも関わらず、なかなか趣味として昇格しない文化があります。
それはカードゲームの始祖『マジック・ザ・ギャザリング』(以下、MTG)。
中学時代にクラスの一部でひそかに流行っているのは知っていましたが、
自分はどちらかと言えば『遊戯王OCG』派だったのもあってなかなか手が出ませんでした。
それから長い時間を経た2014年、iPad専用アプリとしてデジタル化していることを知り興味が爆発。
当時の最新セット『基本セット2015』を購入して身内と構築戦を楽しんでいました。
たまたまこのセットからカードフォーマットが新しくなって見やすくなったのもあり、
絵柄の綺麗さも相まってコレクターとしてのモチベーションもかなりありました。
さらに3年後、ひょんなことからドラフト戦の面白さに目覚め、再びカードセットを買い漁るようになりました。
ドラフト戦とはブースターパックを未開封のまま持ち寄り、
開封したらその中から1枚選んで隣の人に渡し、また渡されたパックから1枚選んで渡し……
という手順を繰り返してカードをピックし、即興でデッキを構築する遊び方です。
あらかじめデッキを作る構築戦と違ってデッキを組む手間が大幅に削減されるため、
気軽にプレイできるのが魅力ですがやるたびに実費がかかる贅沢な遊びでもあります。
自分はカードゲームはかなり弱い部類ですがMTGという文化は間違いなく好きで、
昔からずっとその世界に入っていきたいという思いはありました。
時代が進むと『マジック・ザ・ギャザリング・アリーナ』という完全デジタル版までもが登場し、
世界に踏み込むハードルはさらに低くなっていきました。
2021年には「フォーゴトン・レルム探訪」という
TRPGの名作『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とのコラボセットも発表され、喉から手が出かかったのも事実です。
にも関わらずここまでに至って本格的なコレクターあるいはプレイヤーとして出発していないのは、
カードを販売している日本法人によるカードの誤訳問題があり、商品としての不信感が拭えないからです。
MTGの本場はアメリカなので、当然オリジナルは英語。
よって日本語版はそれを翻訳したものがリリースされることになるわけですが、
近年(2018年くらいから?)は新セットが発売するたびに「誤訳のお詫び」というニュースリリースが出ており、
もはや誤訳の発生が定例化してしまっています。
しかも年々1つのカードセットに含まれる誤訳は増えてきている傾向にあり改善の兆しがありません。
中にはゲームプレイに支障をきたす致命的な誤訳も少なくなく、
誤訳以前の問題(1文丸ごと抜け落ちている)も散見され、あまりにもひどい仕事ぶりと言わざるを得ません。
まれに誤訳されたエラーカードが封入されているのであればむしろ希少価値と見なされることもありますが、
刷られているカード全部が誤訳された状態で販売されているということになると、
もうただただ日本語版カードの価値を毀損しているだけです。
コレクションというのはそれに価値を感じるからするのであって、
これではコレクション対象として見るにはかなり難しいところがあります。
どう考えても誰にとっても百害あって一利なしの状況だと思うのですが、
不思議なことに日本法人はお詫びの声明以上のことは過去数年一度も行ったことがありません。
本当に反省しているのか、組織として再発防止の取り組みをしているのかどうかさえ不透明です。
旧Twitterを見ているとファンからの批判の声もありますが、それもそこまで多いわけでもありません。
外部から見れば半ばまかり通っているような状況にも見受けられ、ここが非常に不思議です。
もうファンにはすでに見放されているのでしょうか。
端的に見れば翻訳業者がめちゃくちゃ劣悪な環境で仕事をしているんじゃないかと邪推したくなりますが、
そもそも日本法人が何も手を打たない現状を本場のウィザーズ・オブ・ザ・コースト社はどう見ているんだろう。
日本市場があまり大きくないので放置されてしまっているんだろうか……。
でも「神河」や初音ミクコラボなど日本市場をターゲットにした施策も結構あるイメージなんですけどね。
プレイ人口から考えても誤訳による損失は無視できないものだと思うのですが。
この件でさらにヤバいのは、紙のカードだけ誤訳が蔓延っているというわけではなく、
デジタル版にも誤訳がありしかも放置されているらしいという状況です。
そのおかげでもはやコンテンツとしての信頼性は皆無で、足を踏み入れようとは思えないのが現状です。
それでも絵柄が魅力でコレクションしたいと思うなら、英語版を買うのが無難でしょうね。
公式の迷走によりIPの価値が落ちるというのはコンテンツ産業では良くあることではありますが、
これはその中でも特級にヤバい案件のような気がしてなりません。
いっそのこと、炎上大好き界隈に注目されて一度ボコボコに叩かれてリセットして欲しいと思わなくもない。