若き日にバラを摘め
世の中は目まぐるしく変化しているので、
どのように生きるべきかという問いに対する明確な答えはもはや存在しません。
「X歳までにYしておけ」というような人生の先輩たちのアドバイスも、
なかなか通用しない世の中になってきたように感じます。
しかし一方で、いつまでも目の前のやりたいことをやっているだけではダメなのも事実。
自分は高校卒業時、当時の担任に「若き日にバラを摘め」という言葉を贈られて送り出されました。
これは去年亡くなった瀬戸内寂聴さんの言葉であり、
若いうちに摘んでおけば摘むときにトゲが刺さって傷ができても若い治癒力で癒えるという話。
担任が最後に送り出す言葉にこれを選んだのは、それなりに理由があるのだと思います。
人生で得たい結果(バラ)を得るためには、困難(トゲ)も乗り越えなければならない。
仕事におけるキャリアや仕事以外の自己実現、資産形成や家族を持つこともその範疇でしょう。
それをなるべく早めにやっておくことは得だというのはなんとなく分かる。
けれど、その根拠として「治癒力があるから」と言われるのは
10代である当時、ちょっと腑に落ちませんでした。まあ直感的にはそういうものかと思いますが。
あれから15年以上経ったいま、ようやくその意味が分かりつつあります。
10代と20代と30代では、バラは変わらなくてもトゲに対する認識はすっかり変わっている。
10〜20代は言うなれば失敗しても「若いから」と周囲に許される風潮が社会全体にあるし、
成功も失敗もしていない若い段階では、挑戦することにあまり恐れを抱きません。
しかし30代に差し掛かると、年齢的なプレッシャーが重くのしかかってきます。
後輩世代がどんどん出てきて、彼らの手前無様な結果を出せなくなります。
また、個人的にもどうしても20代以前の自分との比較で考えてしまいがちで、
若い当時にもしていない失敗はしたくないというプライドが芽生えます。
結果として、30代になってからは積極的にトゲを掴む勇気は持ちにくくなるわけです。
それに社会的キャリアは不可逆的なものであり、若い日にサボった分を挽回することはできません。
30代になってから履歴書を盛ることはできないわけです。
逆に言えば、20代にある程度無理をすると、その実績だけで30代以降は自動的に登っていける。
20代はまさに社会人としてバネを引くための期間と言えます。
そこで頑張れば頑張っただけ、30代以降は楽をできる。
自分がまさにそういう感じのキャリアを積んでいる実感があります。
20代にブラック会社でやってきたことが評価されたからこそいまがあるので。
20代にキャリア形成について考えなかったために、
30代になってから転職活動をしようとして路頭に迷っている人は自分の周りにも何人もいます。
たぶん、そういうケースは世の中にありふれているのではないでしょうか。
むしろ順当にキャリアを積んでいるケースの方が珍しい気がする。