教育への無関心
いまの上司の性格が気に食わないという話をここ最近ちょいちょいしていますが、
実際に上司とコミュニケーションしつつ、なぜこの人はこんなに横暴なのだろうと考えていました。
そして、その答えとなりうるような仮説を思いついたので書き残しておきます。
一言で言えば、上司が嫌になる根本原因は「教育への無関心」にあるのではないかという結論です。
多くの場合、社会人が働く現場は先輩がいたり後輩がいたりして、知識量に大きな差があります。
入社したばかりの後輩は知識量で先輩社員にとても敵わないので、教えを乞うしかありません。
先輩社員は、後輩に仕事を適切に教えることで自分の負担していた仕事を後輩に分け与えられます。
人の出入りが激しい現場でも、こうした知識の継承によって仕事は成り立っていくわけです。
それゆえ、いかにして適切な知識の継承を行うかというのはきわめて重要な課題であり、
そこで「他人に教える」と言う高度なコミュニケーションが求められることとなります。
教える際には後輩社員が何を知っていて何を知らないのか、何ができて何ができないのか、
といったところまで把握しなければならないし、
当然先輩である自分がこれまで何をしてきたのか、
その本質や極意はどこにあるのかといったこともしっかりと言語化しなければならない。
しかもただ「伝達」すればいいと言うわけではなく、相手が理解して初めて目的が達成されます。
これは仕事そのものを遂行するためのスキルとはまた違う高度なスキルだと思います。
教育が適切に行われると、後輩は仕事のコツを早く理解し仕事を多くこなせるようになります。
それによって先輩社員の仕事量を後輩に分配することができます。
教育はそれ自体仕事ではありませんが、仕事の能率を上げるための手段としては非常に優れています。
自分の経験則から言って
リソースがタイトな現場ほど教育のプロセスをとことん合理化している傾向にあり、
また仕事をシビアに考えている管理職の人間ほど教育を重視する傾向にあるように思います。
では、そのように能率化の観点からメリットの大きい教育に無関心であるとはどういうことなのか。
思うに、いまの現場の上司は仕事の能率化を望んでいないのではないでしょうか。
つまり、上司がただ一人大きな負担を抱える代わりに手下に対して常にマウントを取れるこの状況が、
上司にとって居心地が良いからこそあえて教育から目を逸らしているのではないかと。
なぜそんなことをするのかというと、考えられる理由を整理すると大きく3つあります。
まず上司が教育スキルを持ち合わせていないから。
それから教育しないことによって上司は現場における絶対王者として偉そうにしていられるから。
マウントを取れなくなるのは困るというわけですね。
そして、そもそも全体の仕事量が部下に割り振らないといけないほど多くないから。
IT企業の現場で嫌な上司が多いと感じるのは、そもそも教育をするメリットが無いので、
使い捨ての駒としか見られていないからなのではないかと改めて感じます。
上記3つの理由は別に今回の現場特有の事情ではなくどこでも起こりうることだし、
IT企業の場合は特に技術の切り売りという名目で部下は所属から派遣される他社社員にすぎず、
仮に熱心に教育したとしてもまたすぐに離れてしまうリスクが大きい以上、
教育などという仕事と直接関係のないことに投資するよりも即戦力を求めるのは当然の流れです。
即戦力なら重宝するし、
そうではないならお荷物なだけというのがこの業界の末端を上から見た実情なのでしょう。
業界がそもそも教育をする義理が無いので、お荷物社員は永遠にお荷物ということになります。
現場に行ってスキルアップできるというのはあくまで能動的な自己学習の範疇でしかありません。
そう考えるとつくづく恐ろしい世界です。
新卒から頑張ろうというのならともかく、
アラサーにもなってIT業界(特にSES)に転職するのは半ば自殺行為なんじゃ……。
とはいえ、自分はもう引き返せないところまで来てしまったので今更リタイアできません。
せめて自分にできることは、手元にあるスキルでも有り難がってくれる現場を見つけることですね。
2021年の現場が実際にそうだったので、必ずそういう現場はあると思います。
そういう現場を探す一方で、
時間とモチベを捻り出してできることを着実に増やしていくしかなさそう。
今回みたいにハズレの現場を引いてしまった場合は半ば割り切っていくしかないのかも。
そうなると次の現場候補も果たして本当にそれで良いのかきちんと考え直す必要がありそうです。