ゲーム性とは何か
ゲーム性という言葉は当たり前のように使われていますが、その解釈は千差万別です。
一般的には「ゲームを面白くする要素」であると自分は解釈していますが、
どういうときに面白さを感じるかは人それぞれであり、一概に説明することはできません。
特に、複数のジャンルにまたがるゲーム性を定義するのは困難だと思います。
これについては、個人的にいくつかのジャンルを思い浮かべた上で、
これこそがゲームの面白さの根源なのではないかと思う要素としてひとつだけ心当たりがあります。
それは一言で言うならば「ルール破壊」です。
ゲーム全体で普遍的とされるルール(常識)を破る存在があってもゲームが成り立つような場合、
それはゲーム性をとても豊かにすると思います。
例えば『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズは、
相手キャラクターに攻撃を仕掛けることで場外に吹っ飛ばしたら勝ちというルールのゲームです。
しかし最新作で登場する「勇者」のとある技は、当てれば場外でなくてもダウンを取れます。
同じ桜井作品の『メテオス』は、ブロックを揃えて点火させて塊を持ち上げ、
連鎖によって推進力を積み上げることによって場外へ打ち上げるパズルゲームです。
ところが、「ヘブンズドア」のステージではブロックを揃えた瞬間に場外へ飛んでいくため、
まったく違うゲームへと変貌しています。
桜井さんはこういうルール破壊が好きなイメージがあります。
2009年にリリースされたDSiウェアのパズルゲーム『Somnium』は、
ブロックを動かしてボールの色とブロックの色を揃えるというのが基本ルールです。
ブロックは上下左右に動かすことができるけれども、ボールは動かすことができません。
しかしステージを進めていくと「動かせないブロック」「ボールを移動させるブロック」
「特定の色を持たないボール」等の型破りな要素が次々に登場してきます。
基本ルールは変わらないのに、序盤と終盤ではあたかもまったく違うゲームのようになっています。
2018年にTCGの元祖『Magic: the Gathering』がマイブームになったとき、
《世界のるつぼ》というカードがすごく好きでした。
これは場に出ているだけで墓地に置かれた土地をあたかも手札にあるかのように扱えるカードです。
これにより、土地カードの再利用のみならず、手札をコストとする効果は使い放題になり、
アイデア次第でいくらでも強力なコンボを生み出す基盤になります。
シンプルかつ応用の効くルール破壊カードとして非常に優秀なデザインだと思います。
同じくMTGには《血染めの月》というカードもあり、こちらもかなり好きです。
これも「基本でない土地は山である。」というシンプルな効果文ですが、内容はめちゃくちゃです。
MTGでは特殊な効果を持たない、1色だけのマナを生み出す土地カードを基本土地と呼びます。
一方、なんらかの特殊効果を持つ土地カードは「基本でない土地」という分類になります。
当然、基本でない土地には強力なカードが多いので採用する人も多いわけです。
《血染めの月》は場にあるだけでそれらを全部基本土地の《山》に変化させることで
基本でない土地に依存しているデッキはあらゆる効果を失い赤マナしか出せなくなるため、
赤以外をテーマとするデッキではこれ1枚であらゆる戦略が崩壊してしまいます。
なにしろマナ基盤を奪われたらどんな強力なクリーチャーを持っていても場に出せないのですから。
要はこれ1枚の存在が基本でない土地に対する超強力なメタとして機能しているわけです。
ルール破壊要素は面白いですが、それをデザインするのは非常に難しいと思います。
紫ピクミンのように単なるバランスブレイカーになってしまったら
ただただ他の要素の価値が落ちるだけだからです。
ルールを逸脱しているが、根幹からぶっ壊すわけではないという絶妙な配分が必要。
《血染めの月》はかなり根幹から破壊しているように見えますが、
禁止カード指定されていないということはバランスは取れているのでしょう
(そもそも破壊耐性が無いエンチャントなので除去カード1枚で対策できる)。
カードゲームはコストの概念が明確なので幾分か逸脱したデザインもしやすい印象がありますが、
それ以外のジャンルのゲームで適切なルール破壊要素を出すのはなかなか難しいと思います。
ただ個人的にはそれこそがゲームの面白さ、
ひいては優れたゲーム性を構成する要素だと思っています。