恋愛観のジレンマ
前々から気になっていた恋愛観についてちょっと考えてみたいと思います。
将棋少年が主人公の『3月のライオン』という漫画では、
主人公(高校生)が居候する家の3歳年下の女の子に自分でも知らず知らずのうちに惹かれていき、
あるとき居候先の家庭問題をきっかけに恋愛をすっ飛ばしてプロポーズをします。
それを知ったタイトル保持者の雷堂棋竜が、軽率な結婚を戒める台詞として放つのがこちら。
初めて付き合ったクセに「この人しかいない!!」なんて
そんなの 誰でも良かったって言ってんのと同じだーーーーーっっ!!
(羽海野チカ『3月のライオン』11巻 Episode.109「大阪③」)
果たして、これは正しいのでしょうか?
初恋を否定されているような気がしてなんとなくモヤモヤするような気がします。
まず、初めて好きになった人を「この人しかいない!」と思うのはごく自然だと思います。
思春期ならなおさらそうでしょう。
ただそれが「誰でも良かった」と言えるのかどうかについてはさまざまな考え方がありそうです。
それが正しいとして、それが善いことなのか悪いことなのかについても同様です。
間違っているとしても、それぞれに善いとする意見と悪いとする意見があるでしょう。
「正しい&善い」と言えるとしたら、
それはそもそもヒトが持つ異性を敬愛する心を信頼できる場合ではないでしょうか。
恋愛は本来あくまで個人間の関係性であり、
他の異性と比較するということはパートナー選びの本質には関係ないことで、
比較している時点で「恋愛している自分」をできるだけ盛りたいという打算的な考えが根底にあり、
初恋のようなまっすぐな恋愛感情とは関係無いということです。
「正しい&悪い」と言えるとしたら、それは恋愛には負の側面があるということを知っている場合です。
付き合って最初しばらくはお互いに良い面しか見せないし、見えない。
しかし年月が経てば許容し難い欠点がボロボロと出てきて、それを受け入れられるかどうかが問われる。
また恋愛に浮き足立っていた時期が過ぎれば冷静になり、相手に対する評価も変わってくる。
そういう深いところまで経験していないのに結婚を考えるのは浅はかだという意見です。
「間違っている&善い」と言えるとしたら、
そもそも異性は選べるものではないという考えではないでしょうか。
自分の本意とは関係なく、成り行きによって巡り合う。
その人は必ずしも理想の異性ではないわけですが、結果的に「この人しかいない」状況になりうる。
「誰でも良かった」と言えるのはあたかも能動的に選んで決めている印象がありますが、
世の中の結婚の形は必ずしもそうとは限りません。
「間違っている&悪い」と言えるとしたら、
そもそも「誰でも良かった」と言わないためにはあらゆる恋愛を経験する必要があり、
それは突き詰めるととんでもないステータス至上主義になってしまいます。
また、その考え方は一夫一妻制の結婚にリスクを感じているからこそあるもので、
これを肯定するということは少なからず不倫や浮気を肯定することにもなりかねないのでは……と。
別に自分が結婚について偉そうに語るつもりもありません。
こういう微妙な問題は各視点から場合分けして考えるといろいろな考え方ができて面白いという話です。
本気で議論したいテーマについては、各方面からの意見をこうやって書き出す癖をつけたいものです。
ちなみに自分は、現時点では「正しい&善い」派に入ると思います。
初恋の相手はおそらく一生忘れないしいまでも出会った異性の中で別格の位置にいますが、
それと結婚相手としての理想はまったく別々に考えています。
「この人しかしない!!」という気持ちは否定しないが、
絶対成就しないので結婚は別問題として切り分けざるを得なかったということですね。
その後者の理想的な相手は、自分の人間観が十分成熟すれば究極的には「誰でもいい」のかもしれません。