Chrononglyph

エレクトロニカ

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#7854

暗闇のライブ

エレクトロニカ・アーティストの大御所「Autechre」が2026年02月、来日決定。
東京公演は3年ぶりだそうで、2023年に「SONICMANIA 2023」というイベントに出演していたようです。
これは知らなかった。
その前は2018年の恵比寿での単独ライブで、当時は上京前ということもあり断念。
さらにその前は2015年の「TAICOCLUB」で、これもいつか行ってみたいという妄想を垂れ流すにとどまっていました。


3度見送ってついに公演前に情報をキャッチし、かつ上京後初めての来日というチャンスを得た今回。
チケットは約9,000円とかなり高額ですが先行抽選販売に申し込んでみることにしました。
いわゆるエレクトロニカに興味を持って16年。ライブチケットに手を伸ばしたのは今回が初となります。
クラブハウスに行くのは東京旅行以来なので6年ぶりくらいでしょうか。
当時はフューチャーベース全盛期で、Yunomiを目当てにライブに合わせて東京旅行を画策した覚えがあります。


今回のAutechre、正直言うと楽しみというより怖さの方が勝ります。
Autechreのライブと言えば、完全に真っ暗闇の中で行われることで有名。
先行チケット販売の注意事項にも「携帯の電源は切ってください」「公演中の入退場は極力お控えください」とある。
それでいて1階席はスタンディングのみです。これ、他のお客さんとトラブルにならないんだろうか……?
まぁ、真っ暗闇だからこそ その辺は無礼講ということになるんでしょうか。
他のお客さんに視認されないからこそ遠慮なく踊れるということなのかもしれませんが、
いずれにしろかなりの「非日常」が待っているのは確かです。


ともかく、AutechreとAphex Twinくらいは一生に一度はライブに行ってみたいということで、
若干不安ではあるものの今回がその契機になるんじゃないかと思っています。
ちなみにAphex Twinの来日は2017年の「フジロックフェスティバル'17(新潟)」が最後みたいです。
近年も欧米ではライブをやっているようなので、いずれフジロックに登場する日も来るのでしょうか。
Aphex Twinの来日は2017年の前は2000年と17年のブランクが空いているそうで、
来日自体が激レアであることは間違いありません。
もし2020年代に一度でも来てくれるならチャンスを逃さないようにしたいですね。


エレクトロニカは作業用BGMとして聴くようになって久しいですが、
2009年に出会った直後にはそれこそAutechreも含めてテクノとして聴いていた音楽も数多くありました。
そのジャンルの違いはきわめて主観的で自分勝手な線引きではあるものの、
こうしてライブの存在を知るとテクノとしての側面を久々に思い出した気がします。
昔は通勤・通学時にテンションを上げるための音楽としてもエレクトロニカを聴いていたことがあったものの、
最近はめっきりそういう用途では聴かなくなっていたなと。


もしこのライブに行くことがあったら、少なからずエレクトロニカというジャンルの認識は改めることになると思います。


#7748

ダーク・アンビエントの世界へ

最近、Aphex Twinの『Selected Ambient Works Vol.2』(以下「SAW II」)にハマりつつあります。
SAW IIは1994年にAphex Twinのキャリアとしては初めて大御所Warp Recordsから発売されたアルバムで、
その名の通りアンビエント・ミュージックを集めた作品です。
前作『Selected Ambient Works 85-92』はテクノ色もあっていわゆるアンビエント・テクノとしての傑作、
あるいはAphex Twin初期作品の代表作として語られることが多いですが、SAW IIはノンビートの純アンビエントです。
1980年代以前にブライアン・イーノによって開拓された「聴き流す音楽」としてのアンビエントではなく、
高級ヘッドホンを装着して目を閉じながら聴くような「没入する音楽」としてのアンビエントの開祖。
このジャンルの金字塔とも言うべき高い評価を得ています。
去年2024年に30周年記念でリイシューされ、その際に欠番だった19トラック目が正式に収録された上、
26〜27曲目としてボーナストラックが2曲追加されました。


自分がこの音楽に出会ったのは2010年。
Aphex Twin、あるいはエレクトロニカ全般に対して、ある種のヘンテコさを求めていた当時は、
ただただダークでビートレスなこのアルバムは(個性や面白みに欠けるという点で)あまり良い印象はありませんでした。
のちの2013年、Taylor Deaupreeとの出会いをきっかけに没入系のアンビエントにハマる時期も来るのですが、
その当時もSAW IIのことは忘れてしまっていました。


SAW IIのような(便宜上)ダークなアンビエントを見直すきっかけになったのはKettelの『Volleyed Iron』でしたが、
当時は卒業論文によるうつと昼夜逆転病によって身体的・心理的にどん底状態で、
どん底だからこそ陰鬱な音楽を求めてたどり着いたという実感があったこともあり、
それから10年近くの間、ダーク・アンビエントはどん底な心にこそ沁みる音楽、という印象でした。
それは心の谷底から脱してしまえばめったに聴く機会が無いということを意味しています。
ただ、ふとしたきっかけで特に気落ちしていないけれど久々に聴きたくなって聴いてみたとき、
ダーク・アンビエントがただただ音楽として美しいものであることを再認識するに至りました。


20代はエレクトロニカに、あるいはAphex Twinに、あるいはダーク・アンビエントに対して、
ある種の特殊性や付加価値を求めていたようなところがあります。穿った聴き方をしていたということですね。
しかしいま、ようやく変なプライドも鳴りをひそめ真っ直ぐに「音楽を聴く」ようにできるようになったとき、
改めてSAW IIの美しすぎる世界観に驚いてしまいました。
自分はこんなすごいアルバムを15年もライブラリの奥底で眠らせていたのかと。
「#1」や「#7」はアンビエントなのに耳に残るメロディで、これぞ没入系アンビエント! という感じがするし、
かと思えば「#9」は同じ切り口ながら全然違う世界観で表現していてこれも好き。
SAW IIは異世界へ旅行できるアンビエント・アルバムだと思っていましたが、
正しくは「いくつもの異世界」へ旅行できるアルバムですね。まるでさまざまな世界を探訪するファンタジー小説みたい。


そのAphex Twin文学をちゃんと理解できるのはまだまだ先になると思います。
このアルバムをガッツリ1枚分語れるのは……何年先になることやら。


#7667

作品に集中することの重要性

イギリスの国営放送局であるBBCのラジオ局(BBC Sounds)で、
エレクトロニカ・アーティストのAutechreが20曲チョイスしてDJする企画(?)があったらしく、
ぴったり1時間のそれを仕事の合間に聴いていました。
冒頭の楽曲があまりにもAutechreっぽい楽曲だったので「NTS Sessionsみたいな企画なのかな?」
と思っていたら全然違うアーティストのオリジナルタイトルでした。
Autechreが選んでいるという信頼感も手伝って久々になかなか重厚なリスニング体験ができたのですが、
このときに改めて、音楽は聴く姿勢というのもめちゃくちゃ大事なんだと思わされました。


ダンスミュージックやポップミュージックは通勤中に聴いてもなんら問題なく、
むしろそうやって運動しているときに聴く方が気分がアガりやすいという利点もあります。
アンビエント、ジャズなどのインストはムードを作る役目もあり、作業しながら聴くのがうってつけです。
では、微妙にどちらにも当てはまらない より実験的なエレクトロニカはどう聴くのが正解なのか?
個人的には、理想は他の情報を遮断して聴くことに集中する環境を用意することだと思っています。
サラウンドスピーカーを配置したサウンドルームや高級ヘッドホンを用意して、
音楽を聴くことを第一目的とした空間を作る。
作業用BGMとして聴くには勿体無いジャンルなのではないかと改めて思います。
作業用と割り切って聴いたところで細部の音の粒などは耳に入ってこないし、
ヘッドホンを装着していなければ重低音なども聴こえてきません。
それは厳しいことを言えばエレクトロニカを聴いていないのと同義であり、
この種の複雑な音楽はやはり多少の集中力は要ると思います。


2010年ごろを中心に自分の中で一時はゲームを越える勢いで熱中した電子音楽界隈ですが、
上京以来、ヴェイパーウェイヴと出会った時期を除けば基本的に低調であり続けてきました。
しかしそれは興味を失ったわけではなく、
「集中して聴ける環境」から遠ざかっていたことによる副作用だったのではないかとつくづく思います。
確かに、音楽自体に集中するような音楽の消費の仕方は近年全然してこなかったなと。
そしてそれがエレクトロニカという音楽を過小評価する要因になっていたのではないのかと改めて思いました。
先述のBBC Soundsで聴いたときにビビッときたアルバムはその場でApple Musicでダウンロードし、
直後に同じようにアルバムを聴いたときもやはり感動したのですが、
寝る前に作業がてら2周目を聴いたときはそういった感動はほとんどありませんでした。
いかに姿勢によって音楽の「聴こえ方」が異なるかを体感した気がします。


いまの時代、Amazonプライムビデオで映画はいつでもどこでも見放題ですが、
だからこそ映画は「ながら見」のための低コストなエンターテイメントとして消費されつつあり、
それは映画というものの価値を低めてしまっているような気がしてなりません。
やはり映画は映画館で見るからこそその価値が分かると思うし、それは音楽に関しても同様のことが言えます。
もしかしたらゲームについても同じことが言えるのかもしれない。
なんでもかんでも供給過剰な現代だからこそ、目の前の文化に集中する姿勢はより重要と言えるのかもしれません。


#7490

エレクトロニカへの興味再燃

エレクトロニカの巨匠、Aphex Twinの2ndアルバム『Selected Ambient Works Vol.2』(以下、「SAW II」)
が今年で30周年(!)ということで、豪華BOX版としてリイシューされるようです。買おうかな。


このアルバムは24曲収録されていますが、13曲目の「Blue Calx」以外の楽曲はタイトルがありません。
公式サイトではすべて「Untitled」表記となっていますが、
これだと音楽ファイルを取り扱う際に不都合が生じやすいという問題があり、
いくつかの楽曲データベースでは便宜上トラック番号と同じ番号を振っているようで、自分もそうしています。
このアルバムを買ったのが2010年なので、過去15年間はそうしてきたことになります。


しかし今回発表されたリイシュー版には新規に「#19」が収録されることになりました。
つまり、オリジナル版は19番目のトラックは未収録で本当は25曲あったということ。
「#19」は一部の国でのみ収録されたことのあるかなりのレア音源だったようです。
ということは自分が15年間聴いてきた「#19」は実際には「#20」であり、以下もズレるということですね。
なんてこった、そんなの気付かんわ……。


リイシュー版は幻の「#19」に加えてさらに2曲のタイトル付きボーナストラックが収録され、
3枚組27曲として発売されるようです。アナログ版、CD版、ダウンロード版、カセット版の4種展開ですが、
なんとカセット版はすでに売り切れています。最近ではカセットが流行りなんでしょうか?
何年か前にCDの売り上げをアナログレコードが超えたと聞いてびっくりした記憶がありますが、
今度はカセットテープの時代が来ているんだろうか。
CDの国内流通版はなんと6,600円。
このアルバムは2017年にもリイシューされていて、そのときは通常の2CD形態で2,000円ちょいでした。
今回は円安進行も著しい上に記念盤という位置付けとはいえ3曲追加で値段3倍はなかなか強気。


余談ですが、最近はまたエレクトロニカの掘り下げが停滞してしまっていました。
2021年を最後に一昨年・去年と長期停滞期に突入してしまった趣味としてのエレクトロニカは、
音楽プラットフォームをついにApple Musicに移転する決断をしたことによって
音楽を聴くという活動自体の機運が高まり、能動的に新曲を掘りまくったおかげで一瞬だけ復活しました。
が、Apple Musicは特定の曲・アーティストに基づきおすすめプレイリストを作成する機能
(Apple Musicでは「ステーション」、Spotifyでは「ラジオ」という名称)が使いにくいという問題があり、
自分のようにプレイリストをざっくばらんに試聴していくような探し方と絶妙にマッチしていません。
具体的には、ステーションは作成すると選曲された曲のうち先頭のみがキューに入り、
それ以降に何があるのかはスキップしないかぎり分からない仕様になっています。
あくまで次のキューに関連曲を自動で投入するだけの機能ということですね。
一方、ラジオは実際にプレイリストを生成する機能なので通常のプレイリスト同様、曲順なども思いのままに聴けます。
音楽を「探す」という目的では明らかに後者の方が効率が良いと言えます。
生成したプレイリストの楽曲を使ってさらにプレイリストを生成する……という深掘りができるので。


それはそれとしてローカルライブラリとサブスクを融合できるのはApple Musicだけの特権なので、
Spotifyを使いたいなら併用する必要があります。
しかし、さすがにそれだけのために2つのサービスを両方契約するのはコスパが悪いと言わざるを得ない。
と思っていたら、どうやら音楽を探すという目的だけであればSpotifyのmacOS版なら無課金でもできそうです。
音楽を聴き終わるタイミングで広告が挿入される以外は特に機能制限も無いようなので、
たいてい聴き終わる前に次の曲へ行く試聴巡り的な使い方では支障が無いと。
スマホ版は制限だらけでマイライブラリに入れたアルバムの曲目さえ確認できませんでしたが……。


今回のSAW IIリイシューでにわかにエレクトロニカへの興味が再燃しつつあり、
2018年に買ったIDM/エレクトロニカのディスクガイド『IDM definitive 1958-2018』を再読しつつ
Spotifyで久々に新しい音楽を探しに行きましたが、お宝のような楽曲が出るわ出るわ。
このジャンルはまだまだまだまだ掘り下げ甲斐があるのだと再認識しました。
ゲームは老後もやっているか怪しいですが、
音楽に関しては環境さえ整えば一生モノの趣味としてやっていけるだけのポテンシャルは感じます。


#7127

Aphex Twin新EP

昨日のNintendo Direct放映中、タイムラインにびっくりする情報が飛び込んできました。
エレクトロニカの大御所Aphex Twinがひさびさの新EPリリース!!
4曲収録で07月28日発売だそうです。EPのリリースは2018年以来5年ぶり。


収録曲のうち1曲がすでにSpotifyで解禁されていたので聴いてみましたが、
キャッチーのようで難解、懐かしいようで新しい、いつものAphex Twin節で安心しました。
歴代の曲と比べると比較的難解さは薄くなっていてより聴きやすくなっている感がありますが、
根底的なところは昔の作品からブレていません(このブレなさが本当にすごい)。
個人的には前作EPの『Collapse EP』がAphex Twinの全曲中一番かもしれない、
というくらい好きなので今作にも大いに期待しています。
願わくば、2014年以来音沙汰のないスタジオアルバムもいつか作ってくれないかなぁ……。


Aphex Twinのアルバムは2001年以降2枚しかリリースされておらず、
2001年の『Drukqs』、2014年の『Syro』はともに超名盤とされています。
自分は2014年当時、実験音楽に染まりすぎて
どちらかというと聴きやすい部類の『Syro』の良さはまだあまり理解できていなかったのですが、
いまではアルバム単位でエレクトロニカを聴く際にはおそらく一番多く選出されるアルバムです。
とにかくアルバムとしての完成度が高すぎる。
どの曲も捨て難い個性があり、それでいてアルバムとしての一貫性もあるという凄さ。
昔は背伸びして超難解なAutechreなどを分かった風に聴いていましたが、
最近は多少毒気がありつつも聴きやすいAphex Twinの方がよく聴くようになりました。


Aphex Twinは2015年以降アルバムを一度もリリースしていませんが、
実はSoundCloudという音楽SNSに大量の未発表曲を放流したことがあり、
その膨大さを鑑みるとすぐにでもアルバムを出せるくらいのストックはあるように思います。
実は『Syro』の収録曲も当時大量に制作していた未発表曲の中からの選りすぐりらしく、
そのため実態としては2014年に作ったものというよりは、
前作以来2001年以降の大量ストックから選ばれたベストアルバムのような側面があります。
そういう形式でいいからぜひ次世代のスタジオアルバムをリリースしてほしい……。
とはいえ、SoundCloudに放流したというのは、
アルバムをリリースしないという意思表示にも見えますが。


エレクトロニカ界隈はSpotifyのおかげで尖った楽曲を掘り起こすのもより簡単になりましたが、
そういう楽曲は最初こそ刺激的なものの、長きにわたって聴くことはあまりありません。
やっぱりヘビロテするのは決まって徹底的に磨き上げられた大御所の楽曲だったりして、
そういう楽曲はいつでも供給不足に陥っています。
なので今回のEPは発売されたらしばらくは聴きまくることになるんじゃないかなと。


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